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建築家にフルオーダーキッチンをお薦めしたのはバブル経済が崩壊して「失われた１０年」と呼ばれ始めた頃です。

安いものに傾倒する中で世の中に対して逆行するように無心でフルオーダーキッチンの設計を致しました。多くの既製キッチンメーカーがあるのに何故コストを掛けてキッチンを作らないといけないのだ！と揶揄されることも当初はしばしばでした。ですがまだまだ長いトンネルを抜け出せていないこの経済の中で「空間に馴染むキッチンを造りたい」という声がやがて多く出てくることとなります。多様な時代に対応変化していく建築家の心がすべての住宅建築の部位をオリジナル設計していこうという気運は今後も高まることとなるでしょう。

キッチンは大袈裟に言えば人生の一部のような生活の中心的存在です。自動車のように簡単に買い替え出来るものではありません。それだけに寄り添うようにして施主の訴えに耳を傾け、同じ目線で生活を語らいながら考えていくことが必要であると思っております。既製キッチンとは立ち位置が全く違うオーダーキッチンの世界に皆様もどうか恐れずに踏み込んで来て頂きたいと願っております。

KAN WORKS 神原俊吾